固定資産税のしくみ
固定資産税は大変複雑な評価に基づいて算定されている税金で、地方自治体の税収の4割以上を占めるとても重要な税金です。固定資産税があるから自治体の行政サービスが存続できると言っても過言ではないでしょう。
ここでは固定資産税がどのように評価されて課税されているかをご説明します。
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固定資産税ができるまで
現在の固定資産税制度の起源となる、土地などの不動産から税金を徴収する制度のはじまりは、1837年(明治6年)の地租改正ですが、古くは豊臣秀吉が行った太閤検地まで遡ります。
明治のはじめ、近代化を目指す日本は財源を安定させるために、米による税収に代わる税制度を欧米列強の制度を参考にして次々と展開していきます。その一つが地租改正条例の制定でありました。
1837年(明治6年) 地租改正条例制定(税率3.0%)
1886年(明治19年)登記法制定
1899年(明治32年)不動産登記法制定(明治32年法律第24号)、登記法を廃止
1904年(明治37年)非常特別税法制定(田畑地租5.5%、宅地祖8.0%)
1905年(明治38年)非常特別税法改正(宅地祖20%に引き上げ)
1947年(昭和22年)地租が道府県の独立税となり、市町村が課す地租附加税と共に地方税となる
土地台帳法制定
1949年(昭和24年)シャウプ勧告、国税庁・国税局が発足、土地改良法制定
1950年(昭和25年)固定資産税制度設立、地方税法制定、建築基準法制定
上記の年表を見てもらうと分かるように、固定資産税は今から70年以上前に作られた税制度です。戦後焼け野原となった日本を復興するために、GHQの要請でアメリカから最高の税制度を構築することを目的としたシャウプ使節団が来日し、「日本の再興は地方の活性化である」という考えから、地方税だった従来の地租を徹底的に見直し、地方の基幹税収とするために固定資産税が創設されました。
固定資産税とは
固定資産税は土地・家屋・償却資産を課税対象とした個別財産税の一種で、土地や建物を所有した際に、その土地や建物が存在する市区町村に収める税金です。課税対象者は原則として土地・家屋・償却資産の所有者です。
土地は路線価方式が採用されていて、不動産鑑定士が評価した固定資産税路線価をもとに評価額が決定します。家屋の場合は再建築方式を採用しており、過去に建築した建物を、今建築するといくらになるかという評価方法に基づいて評価額を決定します。償却資産は土地・家屋以外の有形資産で事業に使用される資産に課税されるものですが、土地や家屋と違って自治体へ申告をする必要があることから償却資産税と呼ばれることもあります。評価方法は、資産の種類によって耐用年数と減価償却する率を決めて評価額を算定します。
固定資産税は市区町村にとって非常に重要な財源です。普通税なので使徒は定められていませんが、皆さんが毎日使う道路や学校、公園など日々の生活で利用する公共施設の整備のほか、介護・福祉などの行政サービスの財源に充てられます。2022(令和4)年度の固定資産税の税収は9兆5,770億円であり、これは2022(令和4)年度の市町村税収(23兆3,170億円)の約41%にあたります。
固定資産税の税率
固定資産税は標準税率を採用しています。標準税率とは地方自治体が通常よるべき税率のことで、地方自治体が財政上必要であれば、この税率を変更して適用しても構わないとされる税率のことです。もともと、固定資産税の税率は標準税率と制限税率を併用していました。制限税率とは地方自治体が課税できる税率の上限を国が設定しているものです。しかし、2004年に制限税率が撤廃されたので(それまでの制限税率は2.1%)、現在は制限税率がない標準税率のみの税制度となっています。
したがいまして、現在の固定資産税には自治体が設定できる税率に上限がないことになりますが、大半の市区町村は標準税率である1.4%を採用しています。なかには財政が厳しい自治体などにおいては、1.5%や1.6%の税率を設けているところもありますが少数です。
それでは、自治体が自由に税率を設定できるのであれば、もっと税率を上げて税収を増やすこともできるのでは?と思われるかもしれませんが、標準税率は国が地方自治体の財政の均衡を図るための地方交付税を算定する際の基準となるので、不用意に固定資産税の税率を上げると、国からの地方交付税交付金が減ることになりかねません。また、国に対して標準税率の変更についてお伺いを立てないといけないので、簡単には上げられないというのが現実です。
自分が固定資産税を納めている自治体の税率は、固定資産税の納付書にも明記されていますし、市区町村のホームページにも記載があるので、気になる方は確認してみて下さい。
なお、都市計画税は固定資産税とは異なり、制限税率0.3%を採用していますので、各市町村は0.3%以下の税率を設定しなければなりません。都市計画税については別の項目で詳しくご説明します。
固定資産税の徴収方法 ① 方式
税金の徴税方法としては次の種類があります。
・申告納税方式…納税者が所得などを申告し、税額を確定させて納税する方法
・賦課課税方式…課税庁(地方自治体など)が税額を確定し、納税者に通知して課税する方法
固定資産税は賦課課税方式を採用しております。賦課課税方式を採っている税金は主に地方税に分類される税金で、固定資産税や都市計画税以外では不動産取得税、自動車税、個人住民税、個人事業税があります。なお、固定資産税の一つである償却資産は申告が義務付けられていますが、申告する内容は償却資産の内容と価額(評価額)なので、税額を算出して課税するのは地方自治体であることに変わりはありません。
固定資産税は自動車税や住民税などに比べて、税額の算定方法が非常に複雑なので、申告納税にすることは困難であると理解できますが、このことが市区町村の職員の業務負担を重くし、課税ミスが起こる一因になっていると言えると共に、税額の算定に至る経緯が見えにくいことが納税者の関心を遠ざけ、発覚が遅れることにも繋がっています。
固定資産税の徴収方法 ② 賦課期日
固定資産税は納税者が所有している土地・家屋・償却資産に課税される税金ですが、これらの資産をいつ所有していれば課税の対象となるのでしょうか。答えは毎年1月1日時点で所有している資産が課税対象となります。たとえば、令和6年1月1日時点で土地を所有していれば、令和6年度の固定資産税を納めなければいけません。つまり、令和6年1月2日に取得した土地の場合は、令和6年度の課税は行われず、令和7年度が最初の課税年度となります。
この毎年1月1日の固定資産税の基準日を「賦課期日」といいます。仮に、1月2日に建物を取り壊した場合でも、「賦課期日」である1月1日時点では建物が存在しているので、その年度の固定資産税は発生し、4月以降に納税しなければなりません。なお、建物を取り壊した場合は、自治体によっては家屋の滅失届の提出が必要になる場合があります。自治体職員が担当しているエリア内全ての家屋の、1月1日時点の現存状況を把握するというのは無理がありますから、仕方のないことではあります。
固定資産税の徴収方法 ③ 納期
固定資産税の税額が確定したら、毎年4月〜5月頃に納付書が送られてきます。この納付書には納期と税額が記載されていて、納期は4回に分けて支払うようになっています。納期は自治体によって異なりますが、およそ第一期が6月頃、第二期が9月頃、第三期が12月頃、第四期が2月頃となっています。
もちろん一年分を一括で支払うこともできますが、第一期と第二期の半分を支払う、というような納め方はできないようになっています。
なお、支払い方法は、銀行振込のほか、金融機関や郵便局、コンビニに納付書を持参して現金で支払うことも可能です。今ではクレジットカード払いやPayPayなどのスマホ決済アプリ等で支払うことができる自治体も増えています。
固定資産税の納税義務者
固定資産税の納税義務者は、賦課期日(1月1日時点)の固定資産(土地・家屋・償却資産)の所有者です。所有者とは、土地・家屋については登記簿謄本に登記されている者を指し、未登記の場合や償却資産については、その資産を所有している者が納税義務者になります。